『ことばはフラフラ変わる』黒田 龍之助 著(白水社)

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普段は本屋で買うことが多いけど、今回はどうしても発売日に欲しかったのでAmazonで予約!

こちらは黒田さんが大学で行った比較言語学の講義内容を、学生の意見も併せてまとめた本。比較言語学超初心者の私でも、肩の力を抜いて楽しく読めました。

テーマは「言語の変化」。

言語はどうして変化するのか?という疑問から、言語の先祖(祖語)、言語どうしの比較・対照の仕方、地理的・人為的な原因による言語の変化など、様々な視点から言語の変化を説明しています。

方言やピジン・クレオールについても、言語学上の取り扱いが本書では説明されており、特にピジン(言葉が通じない人達の間で、複数言語の文法や語彙を取り入れて作られた新しい言語)は興味深い内容でした。

例として韓国バンブー英語やトク・ピシン語が挙げられていましたが、今後新しく日本語のピジンが生まれる可能性もあると思うとワクワクします。

本文中で取り上げられた講義での質問には「日本語が将来分かれるとしたらどのような要因が考えられるか?」というものがありました。学生たちは様々な要因を挙げていましたが、もし移民が日本に大勢入ってくることで日本語のピジンが生まれれば、そこから日本語が分かれるかもしれないですね。

例えば移民にとって漢字は複雑で覚え辛いものでしょうが、日本の漢字をもっとシンプルにして書きやすくしたものが国内で少しずつ使われるようになれば、書き言葉限定のピジン日本語が生まれるかもしれない。

例えば「権利」と書きたい時に、「権」という漢字が複雑だということで「权」とシンプルになったものが主流で使われるようになったとします。そういった簡易漢字が一部の書籍やネットで使われるようになれば、それはピジン日本語となるのでしょうか?(綴りが異なるだけでピジンになるかどうかは私は分からないけど)

ちなみに今、私がパソコンで「权」と打てていることに疑問を持った人がいたかもしれません。なぜなら実はこれ、中国語なのです。中国語で「権利」は「权利」と書くらしい。

(そういえば大学の講義でメモを取るときも、学生たちの間では「权」という略字?が使われていました。当時は中国語とは知らなかったけど…)

そうすると、漢字はもともと中国から伝わったと言われていますが、日本語から分かれたピジン日本語が日本の漢字の元となった中国語を取り入れるという、逆流のような現象も起きうるのです。それって面白い!!

 

また、ピジン日本語の出現がなくとも、日本語そのものは今後も変化を続けていきます。

もし現在の英語のように、将来中国語の学習者が爆発的に増え、日本人が進学や就職のために必死に中国語を勉強するようになったら?先ほどのピジンの例のように「日本語の漢字よりも中国語の漢字の方が書きやすくていいじゃん。日本語と中国語で違うと覚えるのも大変だし。」という人が出てくる可能性もあります。

英語をカタカナにしてまで取り入れてきた日本だから、中国語の漢字や語彙を日本語に取り入れることもあるかもしれません。中国語だと、語彙そのものだけでなく読み方や綴り(つまり漢字)もそっくりそのまま日本語の一部になるかもしれない。そうすると、中国語の漢字の読み方が現在の日本の漢字の読み方に影響を与えて漢字の読みが増えたり、そこから新しい読みを使った日本語独自の言葉が生まれたりして…。

妄想が広がって楽しい!

 

ちなみに、学生の意見では、「日本でイスラム教やヒンドゥー教が広まって、アラビア語やサンスクリット系の単語の影響を受けた日本語が生まれる」という意見もありました。宗教の影響も考慮したこの学生の意見はなかなか出てこないと思います。すごい!

そして本書の後半では、バイリンガル、日本の言語教育、日本語の歴史など、言葉に興味のある人なら気になる点にも少しだが触れられています。

バイリンガルについては学生の間でも意見が分かれていたけど、子供をバイリンガルにするための早期英語教育(義務教育前からとか)には私も少し疑問があります。

母語で考えられないことは外国語でも考えられない。まずは母語で情報を得て、自分の意見を表現できる力が子供には必要だと思います。言語はツールだから、いくら多言語が話せてもそれを使って物事を考えたり意見が伝えられなくては意味がありません。

「新聞も読めないし、自分の意見も原稿用紙2枚以上は書けないけど、日本語・英語で友達とお喋りできる12歳」と

「日本語しか話せないけど、新聞の記事を読んで、自分の経験・考えをもとに意見を言える12歳」

がいたら、私は断然後者の子供のほうが今後幅広い知識を得て、学問や仕事に生かせると思う。

もちろん日本語だけ勉強すれば後者になるわけでもないし、2ヶ国語を学ぶと前者になるわけではない。しかし、限られた時間の中で子供が2ヶ国語で考えて表現できるようになれるのか?自分は1ヶ国語が精一杯だったのに?

私はどうしてもその疑問がぬぐえないので、外国語の早期教育には疑問が残るのです。

 

半分くらい自分の妄想と意見を書いてしまいましたが、それだけこの本は読んでいて想像が広がります。

各章の終わりには実際に講義で学生に問われた質問が付いているので、単に比較言語学の説明を読むだけではなく、自分が答えるなら…と考え、学生の意見も読むとより楽しめます。

だらだら読むエッセイも大好きだけど、読んで色々考えられる本はやっぱり楽しい!

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