『ポケットに外国語を』黒田 龍之助 著(ちくま文庫)

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黒田龍之助さんはロシア語や英語を大学で教えた後、現在は執筆や講演で活躍している「フリーランス語学教師」。
外国語学部生だけでなく理系学生にも外国語を教えてきた黒田さんの著書は、どれも語学への愛と生徒たちを大切に思う気持ちであふれています。

「外国語の楽しさを伝える。外国語学習において根本的なテーマである。」

そう、黒田さんは語学の楽しさを伝えるのがとにかく上手い!
黒田さんのクラスでロシア語を学ぶ生徒達は最初の授業で一人ずつロシア名がつけられ、ミーシャになったミチオ君やユーラとなったタカハシ君は、新しい自分の名前を書くためにキリル文字を練習しはじめます。

また、英語嫌いの理系学生には「5の二乗」は英語でなんと言う?と問いかけます。
数学は得意でもこの問題にはお手上げの生徒たち。ひねり出された珍回答にコメントする黒田さんはなんとも嬉しそう。
「5の二乗」という理系学生なら当然知っている事柄が出てくることで、英語の勉強だ!嫌だ!なんて拒否する間もなく学生達は答えを考え始めているのです。

ただの単語テストをしたところで、学生の興味が引けないことを黒田さんは知っています。
一見ずれたような話題で生徒を引き付けることで彼らはいつの間にか自ら外国語学習に取り組んでいるのです。

そして黒田さん自身も、現地のサマーコースでリトアニア語を学んだり、フランス語のテープを擦り切れるまで聞くほどの勉強家。
驚くべきは、それほどの努力ができる事ではなく、そこまで外国語を好きになれるというだと感じます。
「愛の反対は無関心」なんて言葉がありますが、「日本では外国語なんていらない」という無関心タイプの対極にいるのはきっと黒田さんでしょう。

そしてこれほど外国語を愛するからこそ、黒田さんは辛く長い外国語学習の中に潜む喜びや楽しみを数多く知っています。学生たちが授業で教わっているのはロシア語や英語だけでなく、外国語学習そのものを楽しむ方法なのかもしれません。
これはいつどの言語を勉強したくなっても生かせる素晴らしい経験です。黒田さんから直接外国語学習の楽しみを教えてもらえた当時の学生がうらやましくて仕方がない。

…と思った私たちのために、黒田さんは「ポケットに外国語を」のような本を何冊も書いてくれています。
黒田さんのエッセイを数冊読んだ後「トルコ語やってみようかなぁ」と手をつけた私は、既にこの本を通して語学の楽しさを教えてもらった生徒の一人なのです。

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