「このマンガがすごい!2018」オンナ編 第3位 おめでとうございます!
アメリカの大学に留学でやってきた日本人のサトコ。ルームメイトの女の子はサウジアラビア出身でイスラム教徒の女の子、ナダだった。二人の出会いからこのマンガは始まります。
イスラムって何?という人でも楽しく読めるマンガ
日本人のサトコはイスラム教のことはさっぱり分からず、被り物(ヒジャブ)や食事についてナダにたびたび質問します。サトコに対するナダの説明はとても分かりやすく、自然とイスラム教について知ることができるマンガです。
イスラム教に関する本は文庫本からハードカバーまで多数出ていますが、どれも解説が丁寧な一方で、イスラム教の歴史やクルアーンの内容に関する部分はどうしても複雑で読みにくいと感じることもあります。
「サトコとナダは」イスラムって何?という人や、今までのイスラム関連本で挫折した人も気軽に手に取れる本です。
宗教が中心でないところが良い
マンガの帯では「親友はイスラム美女子」とイスラム教について描いてある点が強調されていますが、二人の生活はもちろん宗教を中心としているわけではありません。
ショッピングや料理を楽しむ様子はどこにでもいる女の子2人組。
イスラム教徒と聞くと、遠い国で全く異なる生活をする人たちだと感じるかもしれません。しかし、友人や家族を大切にしたり美味しいものが好きだったり、私たちはまず「人間」としての共通点をたくさん持っています。
宗教や異文化について考えるとき、私たちは「異なる点」にばかり目を向けがちになります。
しかし、このマンガではサトコとナダの「異なる点」を描くのと同じくらい二人の「共通点」も描かれており、読んだ後に「やっぱりイスラム教の人達は遠い世界の人だ」と終わらないように話のバランスも工夫されていると感じました。
他者の理解について考えるきっかけをくれる
サトコはイスラム教についてたびたびナダに質問をしましが、決して宗教に強い関心があるからではありません。
「文化を知りたいのはもちろんだけど、私は ナダ あなたを知りたいの」(1巻 33P)
とサトコがナダに伝えるシーンを読むと、二人は決して互いの文化や宗教を熱心に勉強しているわけではなく、ただ目の前の相手について考え理解しようとしているように感じます。
その人が大切にしているものを大切にして、悲しむことや不快に思うことはしない。そして、それが自然と相手の文化や宗教を知る事につながっている。
『サトコとナダ』は国や宗教を超えて、もっとシンプルに「相手を理解するとはどういうことか」を教えてくれるマンガです。
子どもにも読んでもらいたい
2巻の巻末エピソードではサトコの留学前のエピソードが描かれます。
サトコが感じたような、人と違ってはいけないというプレッシャーやグループから外れる恐怖は学生時代に誰でも体験したことがあるでしょう。自分と相手が違うということを受け入れるのは、特に小~高校生にはとても難しいことです。
だからこそ『サトコとナダ』は子どもにも読んでもらいたい。
自分と人は価値観も考え方も違う。そしてそれは決して悪いことではない。『サトコとナダ』はそれをスッと受け入れられるようにマンガで教えてくれます。
そして、先ほど書いたようにイスラム教について知る第一歩としても良い本です。
学校の図書室や図書館にもぜひ置いて、多くの子どもに手に取ってもらいたい一冊です。
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